
Photo: RDNE Stock project / Pexels
口頭指示の“1ミリ”は、mgなのかmLなのかが曖昧で、与薬の単位間違いや10倍量事故につながる危険があります。数値ごとに復唱し、緊急時こそ単位を聞き返し、あとで必ず記録に残す——医療安全情報をもとに口頭指示の安全な受け方を解説します。
「○○を1ミリ入れて」——急いでいる場面で、医師からこう口頭で指示されたとき、あなたは何の「ミリ」かすぐに分かりますか。この「1ミリ」が、mgなのかmLなのか曖昧なまま進んでしまうと、与薬の単位間違いや10倍量の事故につながる危険があるとされています。
私も新人の頃、緊急時に飛んできた口頭指示を、聞き返すのが怖くてそのまま受けそうになったことがあります。でも、聞き返しは「できない人」の行動ではなく、患者さんを守るプロの確認です。この記事では、口頭指示の単位をどう聞き返し、どう記録に残すかを、医療安全の考え方をもとに紹介します。
“ミリ”が危ない|mgとmLは別物
「ミリ」という言葉は、現場で**mg(ミリグラム=薬の量)にもmL(ミリリットル=液体の体積)**にも使われます。口頭ではどちらも「ミリ」と略されがちで、ここに取り違えの危険があります。
- 「1ミリ」が、薬剤量の1mgなのか、薬液1mLなのか
- 薬液の濃度によっては、同じ「1ミリ」でも実際に入る薬の量が大きく変わる
- 略語や数字の聞き取りで、桁が一つずれる
口頭指示は、指示書のように文字で残らないぶん、聞き間違い・思い込みが入り込みやすいとされています。だからこそ、単位は必ず最後まで言葉にして確認することが大切です。
復唱は「数値+単位」をセットで
口頭指示を受けたら、**復唱(リードバック)**が基本です。ただ「はい」と返事をするのではなく、聞き取った内容を声に出して返し、指示者に確認してもらいます。
このとき大事なのは、数値と単位をセットで、薬剤名から最後まで読み上げること。
- ×「はい、1ミリですね」
- ○「○○(薬剤名)を、1ミリグラム、静脈注射で、でよろしいですか?」
数値だけ、単位だけを返すのではなく、「何を・どれだけ・どの単位で・どうやって」を通しで復唱します。指示者が「そう」と答えて、初めて指示が確定します。少しでも違えば、そこで止まれます。
緊急時こそ復唱する
「急いでいるときに復唱なんてしている余裕はない」と感じるかもしれません。でも実際は逆で、緊急時こそ復唱が効きます。
緊急の場面は、
- 全員が焦っていて、指示も短く・速くなる
- 騒がしくて聞き取りにくい
- マスク越しで声がこもる
など、もともと聞き間違いが起きやすい条件がそろっています。ここで省略すると、まさに事故が起きやすい場面で確認のブレーキが外れてしまいます。
復唱は数秒で終わります。「○○を1ミリグラム、静注ですね」と返すだけ。急いでいる相手にも、むしろ「正しく伝わった」という安心を返せます。焦るほど、ゆっくり・はっきり・単位まで、を意識してみてください。
あとで「必ず」記録に残す
口頭指示は、その場限りにせず必ず記録に残すことが原則とされています。記録がないと、後から「言った・言わない」が生じたり、次の勤務者に正しく引き継げなかったりします。
- いつ(日時)、誰から、どんな内容の指示を受けたか
- 復唱して確認したこと
- 実施した時刻・内容
- 可能なら、後から指示者の正式な指示(指示簿への記載など)を得る
記録のタイミングや、口頭指示をどこまで認めるかは施設ごとに細かく決められています。口頭指示の運用は、所属施設のルールを最優先にしてください。原則「口頭指示は緊急時など限られた場面だけ」とする施設も多くあります。
単位の間違いは「桁」にも要注意
単位の取り違えは、しばしば桁の間違いと一緒に起こります。「mgとmLの取り違え」と「0が一つ多い」が重なると、10倍量どころではない量になりかねません。
数字を読み上げるときは、小数点や最後の桁まで読み切る——この基本は与薬全般に共通します。流量や桁の確認は輸液ポンプの桁間違いを防ぐコツ、単位そのものの間違いやすさはインスリンの「単位」とmLの違いも参考になります。報告・指示のやり取りの型としてはドクターコールのISBARCもあわせてどうぞ。
まとめ
- 口頭指示の「ミリ」は、mg(量)かmL(体積)か曖昧で、単位間違いの危険がある
- 復唱は薬剤名・数値・単位・経路をセットで、指示者の確認を得るまで行う
- 「ミリ」など曖昧な単位は、必ずmgかmLかを聞き返す
- 緊急時こそ復唱——焦る場面ほど聞き間違いが起きやすい
- 口頭指示はあとで必ず記録に残し、運用は所属施設のルールを最優先に
聞き返すことは新人の弱さではなく、患者さんを守る確認そのものです。単位と桁の感覚を磨いたら、インスリンの単位の落とし穴もぜひ読んでみてくださいね。
出典・参考
※ 数値・医療的記述は上記の一次情報・公開資料に基づいて作成しています(公開時点)。
あわせて読みたい

輸液ポンプの「桁間違い」を防ぐコツ|“何時に終わる?”で10倍量を防ぐ
輸液ポンプの流量設定は、桁や小数点を一つ間違えるだけで10倍量の投与事故につながります。指差し声出し照合に加え、“終了予定時刻からの逆算”という新人でもできる確認のコツを、医療安全情報をもとに解説します。
続きを読む
インスリンの“単位”とmLを取り違えない|専用注射器の鉄則
インスリンは「単位(U)」で指示が出る薬です。これをmL(ミリリットル)で考えた瞬間に、桁違いの過量投与が起こりえます。1単位=0.01mLという関係、専用注射器を必ず使う理由、バイアル横に置く運用の工夫を医療安全情報をもとに解説します。
続きを読む
ドクターコールが怖い新人へ|“で、何が言いたいの?”を卒業するI-SBARC
ドクターコールが苦手で受話器を握る手が震える新人さんへ。医師への報告は「型」に乗せれば伝わります。I-SBARCの順番、バイタルを“推移”で語るコツ、依頼を言葉にする方法を、押し付けない先輩目線で解説します。
続きを読む