
Photo: RDNE Stock project / Pexels
与薬ミスを防ぐ基本が「6R」です。正しい患者・薬・量・用法・時間・目的を確認する考え方と、形だけにしないダブルチェックのコツ、特に注意が必要なハイリスク薬の留意点を、医療安全情報をもとに新人さん向けに整理しました。
与薬は、看護師の仕事の中でも特に緊張する場面です。新人のころ、薬を準備するたびに「これで合ってる…よね?」と何度も指示を見返して、それでも不安が消えませんでした。薬の取り違えや量の間違いは、患者さんの体に直接影響するからです。
そんな与薬ミスを防ぐための合言葉が、**「6R」**です。確認すべきポイントを6つの「Right(正しい〇〇)」として並べたもので、与薬の基本として広く使われています。この記事では、6Rそれぞれの意味と、形だけにしないダブルチェックのコツ、そしてハイリスク薬の注意点を整理します。
与薬の6R——6つの「正しい」
6Rは、与薬のときに確認する6つの項目を「Right(正しい)」で並べたものです。施設によっては5Rや7Rなど数が前後することもありますが、核になる考え方は共通しています。
6Rは「順番に唱える呪文」ではなく、ひとつでも崩れたら立ち止まるためのチェックポイントです。「患者は合っているけど、量が指示と違う気がする」——そんなときに気づける目を作るための枠組みだと考えてください。
特に間違いやすいR
6つの中でも、現場でヒヤッとしやすいポイントがあります。
- Right Patient(患者):名前の似た人、同姓の人がいると取り違えが起こりやすい。フルネームと別の識別情報で確認するのが基本
- Right Drug(薬):名前が似ている薬、見た目(包装)が似ている薬の取り違え。「だいたい同じ名前だから」は危険
- Right Dose(量):単位や濃度、桁の間違い。とくに単位の取り違えは重大事故につながりうる
患者さんの取り違えを防ぐ具体的な確認のしかたは、患者誤認を防ぐ確認のコツで詳しく触れています。また、量の取り違えの怖さは、インスリンの例がとても分かりやすいです。インスリンの“単位”とmLを取り違えないもあわせて読んでおくと、数字の確認の重みが実感できます。
ダブルチェックを「形だけ」にしない
与薬では、ダブルチェック(二人で確認する)が行われることが多いです。ただ、ダブルチェックは「人数を増やせば安全」というものではありません。やり方を間違えると、形だけになってしまいます。
ダブルチェックを意味あるものにするコツは、それぞれが独立して、指示の原本に立ち返って確認することです。
- 確認者は、準備した人の言葉をうのみにせず、自分でも指示と現物を照合する
- 「患者さんは○○さん、薬は△△、量は□、経路は◇」と声に出して読み合わせる
- 少しでも「あれ?」と思ったら、遠慮せず止めて確認する
確認を頼むことや、立ち止まって聞き返すことは、弱さではなく患者さんを守るプロの行動です。
ハイリスク薬は特に慎重に
薬の中には、間違えたときの影響が特に大きいものがあります。いわゆるハイリスク薬(ハイアラート薬)です。種類や扱いは施設ごとに定められていますが、一般に次のような薬は特に注意して扱われます。
- インスリンなどの血糖に関わる薬
- 抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)
- 一部の注射薬・麻薬・電解質補正に関わる薬 など
これらは「いつもの確認」に加えて、もう一段ていねいに確認する意識が大切です。日本医療機能評価機構の医療安全情報でも、こうした薬に関する取り違えや過量の事例が繰り返し取り上げられ、確認と環境整備の重要性が示されています。
万一ミスやヒヤリがあったら
どれだけ気をつけても、ヒヤッとする場面はゼロにはなりません。大切なのは、隠さず報告することです。報告は責められるためではなく、同じ事故を繰り返さない仕組みづくりのためのもの。書き方に迷ったらインシデントレポートの書き方も参考にしてください。
まとめ
- 与薬ミスを防ぐ基本は6R(正しい患者・薬・量・用法・時間・目的)
- 6Rは唱える呪文ではなく、ひとつ崩れたら立ち止まるためのチェック
- 特に患者・薬・量の取り違えは要注意。単位の間違いは重大事故になりうる
- ダブルチェックはそれぞれが独立して、指示の原本と照合し、声に出して読み合わせる
- ハイリスク薬は一段ていねいに。注意力だけでなく仕組みでも止める
- ヒヤリ・ミスは隠さず報告。手順やハイリスク薬の扱いは自施設のルールが最優先
与薬は、慣れてきたときこそ気を抜きやすい場面です。「6つの正しい」を毎回そろえる——この当たり前を当たり前に続けることが、患者さんの安全を守る確かな一歩になります。
出典・参考
※ 数値・医療的記述は上記の一次情報・公開資料に基づいて作成しています(公開時点)。
あわせて読みたい

インスリンの“単位”とmLを取り違えない|専用注射器の鉄則
インスリンは「単位(U)」で指示が出る薬です。これをmL(ミリリットル)で考えた瞬間に、桁違いの過量投与が起こりえます。1単位=0.01mLという関係、専用注射器を必ず使う理由、バイアル横に置く運用の工夫を医療安全情報をもとに解説します。
続きを読む
患者誤認を防ぐ本当の確認|“○○さんですか?”が危険な理由
“○○さんですか?”という確認は、人が反射的に“はい”と答えてしまうため危険です。患者誤認を防ぐには、名前を名乗ってもらい生年月日と合わせた2要素で確認し、リストバンドと照合します。医療安全情報をもとに本人確認の基本を解説します。
続きを読む
ヒヤリハット報告書の書き方|反省文じゃなく“事実”を書く
インシデントレポートは反省文ではありません。隠さず早く出すほど自分も守られ、本来の目的は再発防止の仕組みづくりです。推測や感情と事実を分け、5W1Hで時系列に書くコツを先輩目線で解説。書いたあとの気持ちのケアにもそっと触れます。
続きを読む