
Photo: Anna Shvets / Pexels
急変は突然起きるように見えて、実は数時間前から前兆が出ていたという報告があります。なかでも呼吸数は最も早く鋭敏に変化するサインとされ、早期警告スコアでも重視されます。“様子見”が危険な条件と、呼吸数を味方にする観察のコツを解説します。
「さっきまで普通だったのに、急に状態が悪くなった」——急変は、こう振り返られることが多いものです。でも実際には、急変の数時間前から、体は静かにサインを出していたという報告があります。
私も新人の頃、「急変は突然来る、こわい」と身構えていました。でも、前兆を拾える観察ができると、むしろ「手前で気づける」場面が増えます。この記事では、なぜ呼吸数が一番早いサインだとされるのか、そして「様子見」が危険になる条件を、一般的な考え方として紹介します。
急変の前には「前兆」が出ていることが多い
心停止や急激な状態悪化の前には、その数時間前から血圧・脈拍・呼吸・意識などに何らかの異常が現れていたという報告があります。つまり、急変は「突然ゼロから起きる」というより、「サインが出ていたのに拾いきれなかった」結果として急変に見えていることがある、という考え方です。
これは新人さんを責める話ではありません。むしろ逆で、
- どのサインが早く動くのかを知っておく
- 「数値の悪さ」だけでなく「変化の方向」を見る
- 一つでも気になれば早めに相談する
という構えがあれば、誰でも前兆を拾いやすくなる、ということです。
なぜ「呼吸数」が一番早く動くのか
バイタルの中で、最も早く・鋭敏に変化するサインは呼吸数だとされています。
体は、酸素が足りない・体に異変が起きているとき、まず呼吸を速くして補おうとします。血圧や脈拍がまだ保たれている段階でも、呼吸数だけは先に上がっている、という場面が起こりうるのです。
ところが現場では、
- 自動測定されないため、つい目視を省略しがち
- 「16回」などと、実測せず記録だけ埋めてしまう
- 忙しいと「見た目で問題なさそう」で済ませる
といった理由で、呼吸数が一番おろそかになりやすいサインでもあります。「測りにくくて見落とされやすい」のに「一番早く動く」——だからこそ、ここを丁寧に見られると差がつきます。
早期警告スコア(NEWS等)という考え方
こうした前兆を、個人の勘だけに頼らず点数化して拾うための仕組みが、早期警告スコアです。代表的なものにNEWS(National Early Warning Score)があり、近年はNEWS2が用いられています。
考え方はシンプルで、
- 呼吸数・酸素飽和度・血圧・脈拍・体温・意識レベルなどを点数化する
- 合計点が高いほど「悪化のリスクが高い」と評価する
- 点数に応じて、観察頻度を上げたり、医師へ報告したりする目安にする
というものです。ポイントは、呼吸数がスコアの中でも重視される項目であること。1つの値だけで判断するのではなく、複数のサインを合わせて「全体として悪化していないか」を見るのがスコアの発想です。
なお、どのスコアを使うか・どの点数で誰に報告するかは施設ごとに異なります。運用は所属施設のルールを最優先にしてください。ここで大切なのは点数の暗記ではなく、「サインを組み合わせて、変化の方向で見る」という考え方そのものです。
“様子見”が危険になる条件
新人さんが一番悩むのが「これは様子を見ていいのか、報告すべきか」の線引きだと思います。次のような条件が重なるときは、安易な様子見は危険とされています。
特に「なんとなくおかしい」という違和感は、ベテランほど大事にするサインだとされています。うまく言葉にできなくても、早めに先輩や医師に共有して構いません。
迷ったら早めに報告する
「こんなことで呼んでいいのかな」とためらう気持ち、よくわかります。でも、前兆の段階で動けるかどうかが、その後を大きく左右します。
報告するときは、何が・いつから・どう変わったかを整理して伝えると、相手も状況をつかみやすくなります。伝え方の型はドクターコールのISBARCが参考になります。
また、急変対応は他の業務と重なりがちで、「何から手をつけるか」で頭が真っ白になりやすい場面です。優先順位の付け方は多重課題の乗り切り方もあわせて読んでみてください。確認や数値の読み違いを防ぐ基本は輸液ポンプの桁間違いを防ぐコツにもつながります。
まとめ
- 急変の前には、数時間前から前兆が出ていたという報告がある
- バイタルの中で呼吸数が最も早く・鋭敏に変化するサインとされる
- 呼吸数は見落とされやすいので、必ず実測し、深さやリズムも見る
- NEWS等の早期警告スコアは「複数のサインを組み合わせ、変化の方向で見る」考え方
- 呼吸数の上昇・努力呼吸・違和感が重なるときは、様子見せず早めに相談する
- どのスコアを使うか・報告基準は所属施設のルールを最優先に
「急変を見抜く特別な才能」より、「早く動くサインを丁寧に拾う習慣」のほうが、新人さんにとってずっと現実的な武器になります。次は、いざというときの報告の型も読んでみてくださいね。
出典・参考
※ 数値・医療的記述は上記の一次情報・公開資料に基づいて作成しています(公開時点)。
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